| 本人による楽曲解説
CD「Texture」(テクスチュール)は全体的にマッタリした仕上がりなので、仕事なり勉強なりドライブなりをしながら聞き流すにはうってつけだと思いますし、実際にそうやって気楽に聞いて頂いて全然構いません。しかしそれだけでなく、時間のあるときには大きな音で(それが難しければヘッドホンで)、そして良い再生装置でじっくりと聞いて欲しいと思います。きっと、あ、ここにはこんな音が、お、ここにもこんな音が、と色々発見しながら楽しんでもらえると思います。
パーカッショニストという立場を生かし、より打楽器を主体にした音楽を作るという考え方もあるでしょうが、あえて言えば、私はピアノやギター、ベース、声などの非打楽器も「音程のあるパーカッション」のようなものだと捉えています。(それを物理的に「叩いて」いるかどうかは別にして。)そういう広義の「パーカッション」の音を組み合わせて作った「旋律と和声の色彩感」(=Texture)、そこを楽しんでもらえたならば、作者冥利に尽きる事この上ないです。
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| (1)「Texture」の一曲目は「ケルク・ショーズ・コム・サ」。タイトルは「何かそのような物」くらいの意味で、レゲエ調のリズムに乗って歌われている歌詞はフランス語です。ボーカルのナジャが作詞してくれました。ナジャとは1994年頃に行われた竹村延和君のレコーディングで一緒になり、その時の彼女の歌がすごく印象的だったので、いつか自分の作品でも歌ってもらおうと思っていたのが十年越しで実現した次第です。ボーカルの録音は2002年初夏に京都で行ないました。
ベーシックのリズムパターンは自分で叩いたパンデイロのサンプリングで、その他にもカシシ、コンガ、タンバリン、ヴィブラフォン等のパーカッションを使っています。ほんの隠し味にカウベルとギロも演奏していますが、これはよーく聞かないと聞き取れないかも。ボリューム・ペダルを使ったリフとワウのかかったギターは森孝人君の手による物です。
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| (2)普段から好きで良く聴いているブラジリアン・フュージョン的なサウンドを自分なりに意識して作ってみたのが、二曲目の「Sometime,
Somewhere」です。
曲途中の展開部分とエンディングでLampの榊原香保里さんと永井祐介君のボイスをフィーチャーしており、彼等の声がなんとも柔らかく暖かなスムーズ感を醸し出しています。Lampは今売り出し中の三人組ポップス・ユニット(こういう言い方でいいのかな?)で、私と同じ時期に同じ場所でレコーディングしていたので顔をあわせる事も多く、そんな流れの中で気軽に録音に参加してくれました。(そのLampのニューアルバムも今年の夏頃にはリリースになるはず。)テーマにソロにバッキングにとアコギでエレギで全編大活躍のギターは各方面で活躍中の森孝人君、ボトムを支える確かなベース・プレイはShiinaBandの椎名達人さん。使用パーカッションはシェイカー、ウッドブロック、クィーカ、ボンゴです。
クィーカというのは、ウホウホウホと獣の鳴き声の様な音を出す楽器。
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| (3)三曲目「Song of Butterfly」は、ロックバンド「アミューズメント・パーク」(現在は解散)のギター&コーラスを担当していたkatsuraさんのファルセット・ボイスを想定して作った曲です。
使用パーカッションは、カシシ、シンバル、カホン、タンバリン、トライアングル、ウッドブロック、ウィンドチャイム、他に鈴や木の実などの小物多数。ちなみに私はトライアングルという楽器が大好きです。幼児の情操教育にも使われる程にポピュラーで単純な楽器ですが、「チーン」というノーマルな音とミュート音を組み合わせるとかなり複雑なリズムパターンを作ることができます。この曲の後半でもトライアングルが明快なリズムを刻んでおり、その音色がとても気に入っています。
幾重にも重なったボイスと左右のチャンネルから聞こえてくるアコースティック・ギターのきらびやかなストローク、そして多数のパーカッション群の醸し出す色彩感を蝶の羽になぞらえ、「Song
of Butterfly」というタイトルをつけてみました。
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| (4)四曲目「Suuny Day」は、スケートボードの滑走音と少女達の歓声を元にループを作り、その上にエレピやオルガン、ヴィブラフォン等を重ねて作ったアンビエント・ボッサといった風情の曲。二年程前、とあるスケートボード・ショップで企画されたコンピレーションCD用に作ったものですが、ホンワカした雰囲気がなかなか良い感じで気に入っていたので、今回も改めて収録することになりました。本アルバム中で唯一、自分一人の多重録音で作った曲です。音楽的な構成は単純極まりないのに不思議と飽きずに聞き通せる、そんなスルメ的一品に仕上がったと思います。
ちなみに私はスケボーは全くやったことがありません。
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| (5)五曲目の「Reincarnation」とは「蘇生・再生」の意。無機質な機械音の反復がベースになっており、打ち込み色が特に強いという意味では他の楽曲とは多少違った趣があるかもしれません。その無機的リズムと対比するようにカシシ、ジャンベ、ウドゥ、トライアングルといった有機的パーカッション群がダビングされております。全体のサウンドに占める使用パーカッションの比重で考えると、アルバム中でこれが最も「パーカッショニストらしい」曲と言えるかもしれません。
ウドゥというのは「壺」に穴が開けてある楽器で、見た目は楽器というより文字通り「壺」です。ドゥーン(村上ショージではない)というような、多少ピッチが上がっていくような低音が出ているので、注意すると曲の後半でその音が聞き取れるかもしれません。この曲は2001年頃には既に出来上がっていましたが、ようやく今回のアルバムに収録の運びとなりました。
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| (6)六曲目「Light and Night」は、一曲目でも歌ってくれているナジャのスキャットをフィーチャーしたトラック。柔らかい印象ながらも、単純明快に陽が差し込むような明るさとは違う、どこかミステリアスな雰囲気の漂う曲だと思います。それにしてもナジャの声は本当に良い感じ。
途中の展開部分でヴィブラフォンやエレピなどいくつものフレーズが次々と積み重なり畳みかけていくところはなかなかカラフルで躍動的に仕上がったと思います。後半のテーマ部分でムニュムニュミヨミヨ言っている音は、ギターのアルペジオのリバース音です。エンディングで加わってくる女性コーラスはLampの榊原香保里さんで、ここで雰囲気がパッと華やぎます。
使用パーカッションはパンデイロ、コンガ、ヴィブラフォン、シンバル、ハイハット、タンバリン。「Light
and Night」というタイトルは曲の持つ陰影をなんとなくうまく捉えているかとも思いますが、むしろただの言葉遊び。
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| (7)七曲目「Seek」は、シンガーソングライターとしてご自分のライブや他アーティストへの曲提供などで活躍されているariさんとの共作です。普段は優しくて力強い世界を歌うariさんですが、その「力強い」要素に特に光を当てた結果、「Seek」は非常に「カッコイイ」仕上がりになりました。ariさんは普段「ソウル」を歌っている訳では全然ないし、記号としての「ソウル・ミュージック」(あくまでも音楽そのものでなくて記号の話ね)には私個人はむしろ軽い違和感さえ感じてしまうのですが、誤解を恐れずに言えばariさんの声はエレガントなだけでなく非常に「ソウルフル」。(文字通り「魂がこもっている」くらいの意味に捉えて下さい。)その声の魅力が満載の極上トラックになったと思います。本アルバム中、もっともシリアスな印象の曲ではないでしょうか。
展開部分のジャズロック的パートでギターを弾き倒している森孝人君、縦横無尽のベース・プレイを見せてまさに本領発揮の感がある椎名達人さん、ワイルドなドラミングを見せる佐々木俊之君など、皆が適材適所でそれぞれの持ち味を出してくれております。私の使用パーカッションはクィーカ、カウベル、ウッドブロック。
タイトルの「Seek」は、何かを「探求」する様がそれに相応しいということでariさんが命名してくれました。クレジット上は二人の共作名義になっていますが、テーマ部分の作曲はariさんが、展開部のアレンジは私が行なったというのが大体の役割分担です。
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| (8)アルバム最後の一曲「プルミエール・アヴリル」は、ちょっとスペイシーなシンセサイザー音を多用したボサノヴァ調ナンバー。これもナジャが作詞し歌っています。曲の根幹をなすアコースティック・ギターのバッキングとソロは森君で、結局彼にはアルバムの全8曲中の6曲で大きく貢献してもらっており、改めて感謝です。
今回収録されているフランス語の歌物二曲(ちなみに、内容はいずれもシンプルなラブソングです)の内、この「プルミエール・アヴリル」と一曲目の「ケルク・ショーズ・コム・サ」のどちらをアルバムの頭に持ってくるかで当初は随分頭を悩ませましたが、結局、より軽快な「ケルク・ショーズ〜」をトップに据えて、柔らかめのボサノヴァでしっとりと幕を閉じるという事で落ち着きました。
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